2004-01-01から1年間の記事一覧

■ 雪女

昨晩から雪が深々と降り続いている。 雪が降ると思い出すことがある。 今から二十五年前、 日本海側の地方は記録的な大雪に見舞われた。 長野県白馬村では、 十三日もの間、雪が間断なく降り続き、 その間の積雪量は三メートル五十センチを超した。 道路も鉄…

■ 醜悪

東京から帰る。 東京はひどい雪だった。 東京駅舎の片隅にあるレストラン、 「DA CIBO」で夕食を摂って新幹線に乗り込む。 東京に出かけた時のいつもの習慣。 この店のピザはなかなか美味い。 昨日はイタリアのビール「メッシーナ」と、 「ロマーナ」と名付…

■ 丹下左膳的胡桃割人形

高さ二メートル三十センチ、 重さ百五十キロの 巨大「クルミ割り人形」が戻ってくる。 顔に大きな傷がついていた。 顔が木目に沿って縦に割れている。 まるで丹下左膳のよう。 帽子には大きな凹みが・・・。 十二月になると、神戸では 地元のバレー団による …

■ 整理整頓?

岡山の職場は昨日で御用納め。 机の上と中、すべての書架を整理する。 小さな江戸独楽が、 書架と書架の隙間から出てきた。 独楽を回して、暫し遊ぶ・・・。 積んであった段ボール箱の中から、 昨年に頂戴した手紙や葉書の束が出てくる。 一通ずつ読み直して…

■ 忘年会

昨夜はクラフトマン・ハウスの忘年会。 出席したのは、 家具作家のM君とN君、 そして、その弟子のN君とI君。 漆職人のS君、玩具デザイナーのK君。 からくり人形作家を目指すH君と、 ガール・フレンドのSさん。 G博物館のAさんとMさんとMさん。 …

■ 獅子口

著名な能面師であった故・鈴木能仁さん。 その能仁さんの弟子のSさん宅を訪問。 能仁さんの作品を見せていただく。 素晴らしい・・・。 能は、 面を上下に動かして微妙な感情を表現する。 これを「照らす」「曇らす」と言う。 ノミの痕が残る、 この「獅子…

■ パイプ煙草

離婚癖のある、 もとい、 男と女の修羅場を何度もくぐり抜けてきた Tからパイプ煙草が届く。 ダンヒルの「EARLY MORNING」と 「ROYAL YACHT」、 そして「LONDON MIXTURE」の三種類。 「LONDON MIXTURE」は上品な香り。 「EARLY MORNING」は軽やか。 「ROYAL…

■ グリル・マルヨシ

大阪阿倍野の旭通りを歩く。 阿倍野は大阪の下町。 旭通りはそのまた下町。 地域再開発とかで、 昔の面影はもうどこに残っていない。 いつもピンク映画を上映していた映画館も、 小便の匂いが漂っていたパチンコ屋も、 怪しげな雰囲気を漂わせていたバーも、…

■ 少しだけ・・・

あまりにも寂しいので、 書斎と決めていた部屋の整理を始める。 自宅から古いテーブルと サイド・テーブルを運びこむ。 お気に入りの書籍七冊と お気に入りのランプ。 そして、ブックエンド代わりに お気に入りのバーボン・ウイスキーを置く。 これで仕事場…

■ SO WHAT ?

ミュンヘンにお住まいのGさんから お願いしていた煙草が届く。 MARLBOROの煙を燻らせながら、 岡山のKさんとの会話を思い出す。 人は親を選んで産まれてはこれない。 国籍も、人種も、容姿も、性すらも選べない。 宿命といえば、それこそが宿命。 「だから…

■ CANON/カノン

新しいアパートに移ってから 二十日間が過ぎようとしている。 そもそもは寝るためだけに借りた部屋だから、 整理する気にはなれなかったし、 飾り付ける気にもなれなかった。 ジャコメッティのデッサン、 田松昌三のイラスト、 そして、私のイタズラ描き・・…

■ 増税

田舎に三十年も住んでいると、 日本の行政の縮図が見えてくる。 A村に「ゲートボール場」が出来ると、 隣のB村にも 立派な屋根付きのゲートボール場ができる。 建築費は二億円。 建設を強要したのは地元の老人クラブだが、 出来上がってこのかた、 この施…

■ 二ベア

鞄職人のTは神奈川県K市の出身だが、 離婚騒ぎのドサクサに嫌気がさし、 プイと家を飛び出して新潟県に引っ越し、 新しい女房と所帯を持った。 その後、 離婚騒ぎのドサクサに嫌気がさし、 プイと家を飛び出して群馬県に引っ越し、 新しい女房と所帯を持っ…

■ マーベリック

十年ほど前、「メル・ギブソン」と 「ジョディ・フォスター」が主演した映画に 「マーベリック」というのがあった。 イカサマ賭博師が主役の西部劇。 映画には、往年の名俳優「ジェームス・ガーナー」が ギブソンの父親役で出ていた。 私が中学生の頃、 「マ…

■ 審判

二人の男が同じ日の同じ時刻に死ぬ。 一人は劣悪な環境に生まれ育ち、 止むに止まれぬ事情で殺人を犯した男。 一人は裕福な家庭で育ち、 何の苦労もなく一生を平凡に生きてきた男。 二人は同時に審判者の前に連れて行かれる。 審判者は殺人を犯した男に天国…

■ グリーティン・カード

タイヤの空気圧、 ブレーキ・オイルやウォッシャー液の残量、 その他諸々をチェック。 車にたっぷりとガソリンを飲ませた後、 私にも「珈蔵」で美味いコーヒーを飲ませてやる。 H村に帰る時のいつもの儀式。 コーヒーを飲みながら、 今日一日の出来事を反芻…

■ ゴンドラの唄

アトリエの窓から通りが見える。 今朝も今朝とて、 どこから見ても夫婦とは思えない、 そんなカップルが何組か通り過ぎていく。 圧倒的に多いのは、 オジサンと若い女性という組み合わせ。 「頑張れオジサン」と、 ついついエールを送りたくなってしまうでは…

■ 安茂里のお兄さん

長野市安茂里(あもり)に住むHさんが、 今年も林檎を大量に持ってきてくださる。 Hさんと初めて出会ったのは、 私が長野県白馬村に住んでいた頃のこと。 当時、彼は青果物の行商を営んでいた。 彼が届けてくれる野菜はどれも新鮮で瑞々しく、 母や妻は「…

■ M君・その2

スイスの授産施設、 「ALBISBRUNN/アルビスブラン」製の積み木。 ここでも多くの知的障害者が働いている。 一流のデザイナーがおもちゃのデザインを提供し、 施設がそれを生産する。 出来上がったおもちゃはルートにのせられ、 世界中で販売されている・・…

■ M君

おもちゃデザイナーのK君と、 神戸市にあるH授産所に出向く。 知的障害を持つ子どもたちが集う施設。 施設の職員の指導のもと、 子どもたちは ここでいろいろな木工製品を作り、 契約している施設や商店に販売している。 木工所の入り口に象のおもちゃを見…

■ 誕生日

今日は私の誕生日。 自分が何歳になったのか、 咄嗟には思い出せないほどの齢を重ねてきた。 東京のEからパイプ煙草を頂戴する。 パイプを嗜む者にとっては何よりのプレゼント。 小包の中には、 バーレー葉とバージニア葉がミックスされた、 アメリカ POSCH…

■ 女性専用車両

急用ができて、 朝早くから神戸の街に出かける。 車を利用していたのでは約束の時間に間に合わない。 最寄りの駅から列車を利用することにする。 T駅で接続列車に乗り込んだところ、 座っていた幾人かの女性たちから キッ!と恐い目付きで睨みつけられる。 …

■ 形見

父の形見の腕時計。 四十七年前の「 RADO GREEN HORSE 」。 初期の自動巻タイプ。 今も立派に動いてくれてはいるが、 一日に必ず五分は進む。 オーバーホールに出したところ、 部品が無いから直せないと、 今朝、以前のままの状態で戻ってきた。 今日も午前…

■ 北海道・その3

札幌発 11:00 のJALで東京に向かう。 機内でコーヒーを頼むと、 チョコレート・フィナンシェがついてきた。 チョコレートの苦味がほどよく利いていて、 なかなかに美味しい。 コーヒーの渋味に良く似合う。 袋の裏面をチェックすると、 製造元は長野県大…

■ 北海道・その2

オホーツクの近く、 留辺蘂(るべしべ)に住む木工家、 Yさん夫婦と小樽で待ち合わせる。 「寒い、寒い」と身体をブルブル震わせている。 「どうした?」と訊くと、 「オーストラリアに行ってきたのサ」 「昨日の夜、千歳に帰ってきたばかりサ」という返事…

■ 北海道

JAL2503便で札幌に向かう。 サッサと仕事を片付けた後、 独りでブラブラと札幌の街を探検する。 アルバイトで稼いだ三万円を握りしめ、 駅の待合室を宿として、 北海道単独一周赤貧旅行を敢行したのは、 私が十八歳の時。 時は移り、 もう、どこにも…

■ 引越し・その2

昨日、 新しいアパートへの引越しを終える。 引越しといっても、 炬燵とベッド、土鍋と茶碗と箸、 テーブル・コンロと包丁とまな板、 各種調味料と酒、 数冊の辞書と 二十冊ほどの書籍・・・を運び込んだだけ。 炬燵に脚を突っ込んで鍋をつつき、 酔っぱらっ…

■ SEIFFEN/ザイフェン

ザイフェンのヴォルフガングから荷物が届く。 この夏に頼んでおいた彼の作品。 十一月末日までに届くようにと頼んでおいたモノ。 今日は十一月二十九日。 彼が約束を違えたことは一度も無い。 大きな段ボール箱を開くと、 作品の他に、グリーティング・カー…

■ 何もしない一日

今日は久しぶりの休日。 今日は何もしないと決めていた。 「カーテンを開けると、外は雲一つ無い上天気。 それだけで僕はすっかり嬉しくなってしまい」と、 すっかり「植草甚一」になった気分で、 パイプとマッチ、 読みかけの文庫本をポケットに入れて 神戸…

■ ENZO MARI/エンツォ・マーリ

一九五七年、イタリアのミラノに、 子ども用の玩具や日常品のデザイン、 アートのプロダクトを手掛ける会社が設立された。 会社の名前は「DANESE/ダネーゼ」。 設立者はダネーゼ夫妻。 ダネーゼの中心となって活躍したデザイナーは、 「ブルーノ・ムナーリ…