■ CANON/カノン

aquio2004-12-19

新しいアパートに移ってから
二十日間が過ぎようとしている。
そもそもは寝るためだけに借りた部屋だから、
整理する気にはなれなかったし、
飾り付ける気にもなれなかった。
ジャコメッティのデッサン、
田松昌三のイラスト、
そして、私のイタズラ描き・・・と、
壁に何枚かの絵を掛けたりもしてみたが、
どうにも殺風景でいけない。
主がほとんど不在の部屋だから
生活の匂いがまったく感じられない。
我が部屋ながら、ちょっと無気味。
今夜から少しずつ飾り付けを始めることにする。
何かないかと倉庫を物色していたら、
パッヘルベルのカノン」のオルゴールが出てきた。
ガラスが割れている。
十五年ほど前に購入した、
「スイス・リュージュ社」のもの。
箱の埃を取り払い、
香箱の中のゼンマイに油を注し、スイッチを入れてみる。
シリンダーが回転を始め、
櫛歯がピンに弾かれて
バロックの美しい旋律が流れ出す・・・。
今日はこいつを部屋に持ち帰ることにする。