■ O君

aquio2005-01-21

二十五年ぶりにO君と会う。
二十五年前、
彼はK大学に通う若者だった
彼はいつも
オンボロの軽四に乗って通学していた。
アルバイトで稼いだ金で購入した車。
夏になると、
彼の車の窓には、
茅で作られた「簾/すだれ」が掛けられていた。
「貧乏人のエアコンですわ」と、
笑い話のネタにしていたことを思い出す。
当時、車のエアコンは標準の装備ではなく、
オプションであった。
「学生の僕にはこの車で十分」とも言っていた。
実に爽やかな青年であった。
その彼も、
今や二人の中学生の娘を持つ父親。
外資系の企業に就職し、
十年に渡るアメリカ勤務を終え、
一年前に帰国したばかり。
「今、どんな車に乗ってるの?」という私の問に、
「もう簾は掛けていませんよ」と笑う。
彼も歳をとったが、
爽やかな笑顔だけは変わっていなかった。