■ 誕生日

aquio2005-05-04

Sが小学校三年生の時に作った紙版画。
九歳の子どもの作にしてはなかなかの構図だと思う。
版画をケント紙に貼り、
面相筆とカラス口を使って文字を描き、
映画のポスターのように仕上げた。
この版画は今も自宅の壁を飾っている。
私には息子が三人いる。
今日はその次男坊Sの誕生日。
Sは福島県猪苗代湖の近くの産院で生まれた。
当時、私は会津磐梯山の裏側、
いわゆる「裏磐梯」と呼ばれる所に住んでいた。
五色沼のすぐ近く。
その年の冬、
裏磐梯地区は記録的な豪雪に見舞われた。
積雪量は五メートルを超えたと記憶している。
五月になっても道路の両側には雪の壁が残っていた。
産気づいた女房を車に乗せ、
雪の壁の中を猪苗代まで走ったことを
つい先日のように思い出す。
私の母方の爺さんは指物師だった。
父方の爺さんは料亭の調理人。
父は電気の技術者。
二人の叔父は、それぞれ鉄工と紡織の技術者であった。
私の家には、手を使ってモノを作る職人の血が流れている。
「手先系の家系」なのだ。
Sは小さなころから台所に立つのが好きだった。
何が彼の興味を惹いていたのだろうか・・・。
「僕は勉強が嫌いだから」と、
十五歳の時にコックになる道を選んだS。
これも血の流れかも知れない・・・。
Sが結婚して子どもが出来たら、
その時、この版画をSに戻すことにしよう。