■ 加藤裕三
加藤「あの世ってあるんかなぁ?」
私 「ま、あるかないか、五分五分やろなぁ」
加藤「俺の命は夏まで保たへんと思う」
私 「医者は直るて言うてたでぇ」
加藤「お前は嘘つきやなぁ」
「お前が来たら、あの世を案内したるわ」
「あの世でもお前と一緒に仕事するんやろか?」
私 「加藤、それは無理な話やなぁ」
加藤「なんでや?」
私 「俺は極楽に召されるやろけど、
お前はきっと地獄に堕ちてるやろからなぁ」
「そしたら、蓮の台から蜘蛛の糸でも垂らしたるわ」
そう言って二人で大笑いした。
死の床にあった加藤と交わした最後の会話・・・。
今日は加藤裕三の命日。
二〇〇一年五月五日、風薫る子どもの日に加藤は死んだ。
享年五十歳。
早すぎる死だった。
加藤は「グリコ」のおまけのデザイナーであった。
ビールが大好きな郵便配達夫がミュンヘンに住んでいた。
郵便配達の途中であっても、
男はビールを飲まずにはいられなかったらしい。
男が天国に召された時、
男はバイエルンの王様に宛てた手紙を神様から託された。
男は託された手紙を届けるためパタパタと空を飛んでいったが、
その途中、ホーフブロイ・ハウス(ミュンヘンのビア・ホール)の
建物を見つけてしまった。
男は託された手紙のこともすっかり忘れてしまい、
今もホーフブロイ・ハウスでビールを飲み続けているらしい。
だから、神様の手紙は未だにバイエルンの王様に届いていない・・・という話。
一昨年、オーバーアマガウで買った郵便配達夫の人形。
右手にホーフブロイ・ハウスのジョッキを持っている。
顔付きといい、体型といい、酒好きであることといい、加藤にそっくり。
「おぉ、加藤やないか」
「どこに行ったんやと思てたら、こんなトコにおったんかいな」と、
値段も確かめずに買ってしまった・・・・。