■ 瘋癲老人日記

aquio2005-09-14

映画「THE BODY OF THE SOUL」を観る。
近くのビデオ・ショップから借りてきた。
邦題は「夜のメイド」。
舞台はローマ。
高級アパートで気楽な生活をおくる老作家が
一人のメイドを雇うところから映画は始まる。
下品な声、下品な会話、下品な立振舞・・・。
育ちの悪さを感じさせるメイドだが、
その肉体だけは素晴らしい・・・。
粗暴な態度のメイドに対して嫌悪感を抱く老人だったが、
次第にその肉体の虜になってしまう。
そして、いつしか主従の関係が逆転していってしまう・・・。
老人の性欲を扱ったものといえば、
谷崎潤一郎の「鍵」と「瘋癲老人日記」が思い浮かぶ。
「鍵」が「陰」の世界だとすれば、
「瘋癲老人日記」は「陽」と言えるだろうか。
「夜のメイド」は「瘋癲老人日記」のイタリア版のような映画。
「瘋癲」の正確な意味を広辞苑で調べてみた。
そこには
「精神状態が正常でないこと。また、そういう人」
「定まった仕事も持たず、ぶらぶらしている人」と記されていた。
「瘋」は「頭痛」という意味を持つ言葉であり、
「癲」は「精神の錯乱」という意味を持つ言葉であるらしい。
己の性欲に翻弄される老人の姿・・・・。
「老人ホームにおける最大の問題は男と女のことです」
「セックスは男だけのものでありません」
「年老いた女性にも性欲はありますよ」。
大阪で老人ホームを経営する知人から聞いた話・・・。
幾つになっても異性に関心をもち続ける男と女。
それが人の「あるがまま」の姿であるのかもしれないのに、
同時に、それは人々の嫌悪と嘲笑の対象になってしまう。
それを素晴らしいこととみなす風土が日本にはない。
「枯れる」ことが好まれる風土・・・。