■ 肉ジャガ
単身赴任で神戸に来ている。
神戸に独りで住むようになって二年半が過ぎた・・・。
「どう、忙しいけぇ?」
「注文の人形は出来上がったのけぇ?」
「いつもいつも何食ってるんだよぉ?」
「こんな料理に餓えてるんじゃないのけぇ?」と、
Yさんが肉ジャガをもってきてくださる。
「天気がいいから外で食べようよぅ」と誘われ、
近くの寺の境内に出かける。
気分はピクニック。
空は抜けるように青いし、鳥は鳴いている。
なんて気持ちがいいのだろうか・・・。
肉ジャガとおにぎりと香の物だけの簡単なお弁当だが、
弁当箱の中の肉ジャガはまだ湯気がたっていた。
作ってくださったばかりなのだろう。
それを車に積んでもってきてくださったのだ。
とても嬉しい。
有り難い・・・・・。
世間話をしながら肉ジャガを箸でつつく。
「歳をとったらこんなおかずが何よりだよなぁ・・・」
「んだよなぁ、フランス料理なんかもう食えねえもんなぁ」
「やはり俺達は日本人なんだよなぁ・・・」
「そりゃぁそうさ、俺達は歴としたモンゴロイドなんだわ・・・」
「俺達って戦後すぐに生まれたから、食い物にはシビアだよなぁ」
「んだなぁ、子どもん時はいつも腹空かせてたもんなぁ・・・・」
「米がやっぱり一番美味いよな」
「あのよぉ、米ってさぁ下半身に効くって知ってるけぇ?」
「いや、知らん・・・」
「でさ、小麦は頭に効くんだってさぁ」
「誰からそんなこと聞いたん?」
「昔、筑紫哲也と三波春夫が対談でそう言ってたのさ」
「へぇ〜、筑紫哲也がそう言ってたの?」
「いや、三波春夫がさぁ」
「へぇ〜・・・」
「米は下半身に効くから、アジアは人口が多いんだってさ」
「へぇ〜・・・」
こうして、オジサンたちの午後は穏やかに過ぎていくのであった。