■ 自動扉

aquio2005-10-30

冷蔵庫の中にビールが入っていなかった。
一風呂浴びた後、アパートの近くのコンビニに出かける。
怪しい雰囲気のセドリックが駐車場に止まっていた。
怪しい雰囲気の中年の男と女がコンビニに向かっていく。
男と女に少し遅れて歩いていたら、
なんと、男が扉を開けて私を待ってくれているではないか。
「なぁ〜んだ、見かけは悪いけどいい人なんだぁ」と、
小走りに駆け寄り、「恐れ入ります」と礼を述べる。
後に続く人のために扉を開けて待つ・・・。
昔はいつでもどこでも日常に見られる光景だったが、
日本人が後続の人間に配慮しなくなって久しい。
いつからこうなってしまったのだろう・・・。
多分、「自動扉」が普及しだした頃からではないだろうか。
自動券売機、自動改札機、自動回転扉、煙草自動販売機・・・。
なんでもかんでも自動・・・。
「お婆ちゃん、ショート・ピース一つちょうだい」
「はいはい」
「お婆ちゃん、二箱もいらんねん。一箱でええねん」
「はいはい二箱ね」
「違うて、一箱でええて言うてるやろ」
「はいはい、二十円のおつり」
「あのな、ショート・ピースが一箱やからおつりは六十円やろ」
近所の煙草屋の婆さんは耳が遠いフリをしていたフシがある。
こんな調子で、私はいつも煙草を二箱売りつけられていた。
「面白い婆さんだったなぁ」と、
時々彼女のことを思い出すことがある。
自販機ではこうはいかない。
自動は便利だが、便利だけのものでしかない・・・。
そこにはコミュニケーションが生まれない。
多少の「不便」は社会の「潤滑油」であったような気がする。