■ D

aquio2005-11-01

東京に住む息子Dの友人がアトリエに来てくれた。
関西への旅行のついでであったらしい。
「親父がどうしているか見てきて欲しい」と、
そう、Dに頼まれたらしい・・・。
友人の名前は「O」君。
O君にDの近況を聞く。
「お洒落にはまったく気をつかわない」
「絵を描いていれば幸せな生活」
「ほとんど経済の観念がない」
「無欲」
「無類の面倒くさがり」
「興味のあることしかしない」・・・・らしい。
それでは子どもの時代とほとんど同じではないかと呆れる。
ANA(全日空)のフライト・アテンダントの制服が制定されて三十年が経つ。
それを記念して、
歴代の制服をフィギュア化して売り出したところ、
なんと、百五十万個もの数のフィギュアが売れたらしい。
発売当日にはショップの前に行列ができたらしい・・・。
Dはそのフィギュアのデザインを担当した。
「Dは食事をちゃんと摂っているんだろうか」と訊くと、
「大丈夫です。僕が時々ちゃんとした飯を食わせていますから」という返事。
「お金はあるのだろうか」と訊くと、
「彼はお金を使わないから、貯金は結構ありますよ」という返事。
「女はいるんだろうか」と訊くと、
「言い寄る女は結構いるが、彼は面倒くさがりだからなぁ・・・」という返事。
「知らない会社から銀行口座に振込みがあるんだよね」
「知らない間に貯金が増えているんだよね」
「なんだか気味が悪いんだよね」と、
DがO君にそう言ったことがあるらしい。
いったい自分が誰とどのような仕事に関わっているのか、
Dにはほとんど興味がないらしい・・・。
Dにとって、それらは煩わしいことでしかないらしい。
絵を描いていれば幸せな毎日。
実にDらしい・・・・。
彼が幸せであるなら、
それはそれでいいのではないか、とビールを飲みながら思う。