■ 十七回忌

aquio2005-11-05

H君の「Nさん、朝です」
「そろそろ出かけましょう」という大きな声で眼が覚める。
今日は岡山の職場に出勤しなければならない。
また、今日は午後から自宅で父の十七回忌が営まれる。
「しばらく家族が顔を合わせていないわねぇ」という、
母の希望(命令)で家族が集まることになった。
年忌法要は一周忌から始まり、三、七、十三、二十三、
二十七、そして三十三回忌と続くが、
「親父の十七回忌」を名目に、
私の兄弟、そして、その子どもたちが集まった。
導仙寺の和尚に来ていただきお経をあげていただく。
私がまだ小さな子どもであった頃、
「今夜は外で食事をしよう」
「今夜は皆で中華料理を食べよう」と、父が家族に告げたことがあった。
母と私、そして二人の弟たちは手をつなぎ、
電車に乗って阿部野の駅まで出かけていった。
阿倍野の駅には父が迎えにきてくれていた。
父が連れていってくれたのは
「東海倶楽部」という名の大きな中華料理店であった。
私は「炒飯」を注文した。
炒飯には小さなカップに入ったスープが付いていた。
初めて口にする中華のスープ。
多分、それはただの鶏がらスープだったのだろうが、
衝撃的に美味しかったことを今でも鮮明に覚えている。
その頃、私の家はひどく貧しかった。
東海倶楽部でのひと時は、
父の家族に対する様々な想いがこめられていたのだろう。
そう思う・・・・。
和尚の読経を聞きながら、その時のことを思い出していた。
岡山の山里に家を建てる時、
老いた父のために陽当たりのいい部屋を用意した。
トイレや風呂場には手すりを用意した。
しかし、その家の完成を見ずして父はあっけなく死んでいった。
家が完成するわずか一ヶ月前のことであった。
あれから十七年の歳月が流れていってしまった。
私は私の子どもたちにどのような思い出を作ってやれたのだろうか・・・。