■ O君

aquio2005-12-19

今朝、O君から私の携帯に連絡が入る。
「Nさん(私)の職場でもう一度働かせてほしい」と言う。
O君はおもちゃ作家になることを夢見ている若者。
半年前まで私のアトリエで働いてくれていたが、
「Nさんから学ぶものはもうありません」と、
そう私に告げてアトリエを去っていった・・・。
「なぜ、また?」と問いただすと、
「技術だけではどうにもならないことに気付いた」と言う。
下手になろうとして腕を磨く職人や作家はいない。
皆、上手くなろうとして精進を重ねる。
しかし、腕を上げれば上げるほど、
「こんなことも出来る・あんなことも出来る」と、
ついつい己の腕に酔ってしまうことがある・・・。
中途半端に腕を磨いた人間が陥りやすい落とし穴ではある。
己の慢心に気付かないのだ。
おもちゃを作る人間には「技術」と「センス」と「思想」が求められる。
O君は私の下で「技術」だけを習得した・・・・。
私を凌ぐほどの技術を持っていたが、
やっと、技術だけではどうにもならないことに気付いたらしい。
技術が無ければ何も作れない。
しかし、
技術があっても、センスが無ければ美しいものは生み出せない。
技術があっても、思想が無ければ何を作っていいか判らない・・・。
おもちゃを作るということは、そういうことなのだ。
「Nさんから学ぶものはもうありません」と、
そう私に告げてアトリエを去ったO君だが、
恥を忍んで連絡してきたのだろう・・・。
それだけ、おもちゃ作りにかける情熱があるということなのだろう・・・。
ま、若気の至りであったと、笑って許してやることにしよう。