■ 牡蠣

aquio2005-12-26

三陸にお住まいのNさんから、
今年も山ほどの牡蠣と帆立が届く。
Nさんと知り合ったのは今から十五年ほど前。
その頃、Nさんは神戸に住んでいらっしゃった。
その頃、Nさんは結婚について大きな悩みを抱えていた。
奥さんとなる女性のご両親が、
二人の結婚を断固として許さなかったのだ。
Nさんは二人だけの結婚式を決意するが、
二人だけの挙式は寂しすぎる・・・。
そこで、
私たち夫婦に立会人になって欲しいとの依頼があった。
結婚式場は小高い山の上の公園。
若い二人にはお金が無かったのだ・・・。
二人は公園で誓いの言葉を私たちの目前で読み上げた。
私たち夫婦は若い二人の決意をたしかに聞き届けた。
質素な結婚式ではあったが、
これほど素朴で真実に満ちた結婚式を私は今まで知らない。
爽やかな風が吹く暖かな日であったことを憶えている。
風に飛ばされまいと、
妻は被っていた麦わら帽子を手で押さえながら、
二人の誓いの言葉を「ウンウン」と頷きながら聞いていた・・・。
その後、Nさんは三陸地方に転勤になる。
その後、Nさんご夫婦には可愛い女の子が誕生する。
孫ができたことで、
奥さんのご両親の怒りも解けた・・・という話も聞いた。
あの時のことを未だに恩義に感じてくださっているのだろう、
いつもこの時期になると、
Nさんから山ほどの牡蠣と帆立が届く・・・。
お返しに今年は何をお贈りしようか。