■ 燕
岡山の田舎では、
田圃に水を張る作業が始まっているらしい。
六甲山にも燕が巣を作る季節が巡ってきた。
近所の畳屋の看板に燕が巣を作り始める。
眺めていると、
雄と雌が交互に飛び立っては土を持ち帰るのだが、
その間隔がとても長いように感じられる。
巣作りには湿った土が不可欠であるらしいが、
この辺りには田圃がない。
川の土手もコンクリートで塗り固められている・・・。
湿った土を求めて、
燕は川の上流辺りまで飛んでいっているのかもしれない。
畳屋のご主人に伺ったところ、
燕は毎年同じ場所に巣をかけるらしいが、
雛が巣立ちを迎える頃になると、
烏がやって来ては燕の雛を連れ去っていってしまう・・・という。
五月から七月は烏にとっても子育ての季節。
燕の雛は烏の雛の餌になってしまうのだ。
「益鳥」「害鳥」という言葉がある。
「広辞苑」では、
「益鳥=作物や樹木の害虫を捕食するため、
直接間接に人間に益するとみなされる鳥類のこと」
「害鳥=農林・水産業に有害とみなされる鳥類」、と定義されている。
燕は「益鳥」であり、烏は「害鳥」であるとみなされるが、
それらは人間の経済活動から見た分類でしかない。
昔、子どもたちの間で、
「烏なぜ鳴くの・烏の勝手でしょ」という歌が流行ったことがあった。
烏がやって来て燕の雛を連れ去っていってしまう。
烏の採餌行動はまさしく「烏の勝手」なのである。
自然界の摂理と言ってしまえばそれまでだが、
燕の「死」は烏の「生」につながっていく・・・。