■ 土砂降り
Fが遅刻してきた。
彼女の遅刻は本当に珍しい。
彼女は近くの女子寮からバイクで通勤している。
事故でもあったのかと心配していた。
昨夜、六甲山には土砂降りの雨が降った。
その土砂降りの雨の中、
Fは大きなゴミ袋に首と腕の通る穴を開け、
それをポンチョ代わりにしてバイクを走らせていたらしい。
あと少しで寮に着くというところで、
バイクに乗った警官に呼び止められたという。
尾灯の球が切れていたらしい。
「整備不良」という名目で、
彼女は最寄の警察署まで連れていかれたという。
警察に連行されたFは車検証の提出を求められたが、
彼女のバイクには車検証を入れておくグローブ・ボックスがなかった。
書類はすべて寮の自室に置いたままであった。
「明朝、再度出頭するように」というお達しがあったらしい。
そんなワケで遅刻してしまった・・・という。
土砂降りの雨の中、
寮から遠く離れた署まで連行されたFはびしょ濡れになってしまったらしい。
「尾灯の球が切れていますよ」
「土砂降りの中では危険ですから気をつけて帰りなさい」
その言葉で済んだことではなかっただろうか。
その警官は「アホ」だったのだろう。
「アホ」でなければ「サディスト」であったのかもしれない・・・。
過日、私も駐車違反で警察署に呼び出されたことがあった。
「なぜ駐車違反を犯したのか!?」
「その理由を正直に述べよ!」と、まるで犯罪者のように扱われた。
「あなたの職業は?」とも訊かれた。
駐車違反と私の職業に何の関係があるというのか。
「アホ」じゃなかろうか。
理由を正直に述べたが、罰金はきっちりと徴収されてしまった・・・。