■ パンケーキ
私の住むアパートは築三十五年の建物。
レトロといえばレトロ。
それなりの趣きもあるが、傾きも、少しある。
窓ガラスは鉄の枠にパテで取り付けられている。
昨夜は激しく雨が降った。
風も強かった。
窓枠が風に激しく揺すぶられ、
ガタガタガタガタ・・・と大きな音をたてる。
いつでもどこでも眠れる性質ではあるが、
どういうワケか、
昨夜は音が気になって眠ることができなかった。
ここ二週間というもの、神経を使う出来事が多かった。
しかし、身体はまったく疲れていない。
神経と身体、
多分、そのバランスが少し崩れているのだろう・・・。
眠ろうとすればするほど眼が冴える。
時間は午前二時。
小腹も空いていた。
コーヒーを淹れ、小麦粉と卵を溶いてパンケーキを作る。
冷蔵庫からバターとメープル・シロップを取り出し、
パンケーキにこってりと塗って食べる。
ベーキング・パウダーが入っていないパンケーキ。
具を入れてソースをかければお好み焼きになる。
パンといえばアンパンやジャムパンしかなかった時代、
子どもたちにとってパンケーキはなによりのご馳走であった。
母が不在の時など、兄弟でよく作っては食べたものだった。
そういえば、広島の呉に「一銭洋食」という食べ物がある。
水で溶いた小麦粉を熱い鉄板の上で焼いただけのもの。
粉の中には刻んだ葱が入っているだけ。
焼きあがった「一銭洋食」に醤油を塗って食べる。
小さく薄いお好み焼きと思えばいいだろう。
粉に桜海老を混ぜると美味しいかもしれない。
今度は「一銭洋食」を作ってみることにしよう。