■ 忘釈僧戯/まんそくじゅんのり

aquio2006-08-02

「プーク人形劇場」で、
韓国の影絵劇「忘釈僧戯/まんそくじゅんのり」を観る。
この影絵劇は
高麗の時代から延々と続いてきたものであるらしいが、
一九二十年代に入るとともに、
何の前触れもなく、
いきなり滅んでしまったものであるという。
その滅んでしまった影絵劇を、
古老たちの証言や過去の文献をもとにして、
一九八三年に復元した・・・という。
台詞は一切なく、
釈迦の教えを歌のように謡うお経の声に合わせ、
龍と鯉が競い合い、
太陽、鶴、亀、松、鹿、月・・・といった、
いわゆる「十長生」の影絵がスクリーン上に浮かびあがり、舞う。
釈迦の誕生日に合わせて上演されてきたらしい。
文盲であった民衆に釈迦の教えを伝えるための影絵劇であったらしい。
中世のヨーロッパにおいても、
教会は「神秘劇」を通じてイエスの教えを文盲の民衆に対して説いた。
「忘釈僧戯」はそのようなものと思えばいいだろうか・・・。
すべての人形は紙で作られているが、
「忘釈僧」の人形だけは「木」で作られている。
三本の紐を引っ張ることで、
この人形は両脚をあり得ない角度に折り曲げながら、
「バチン」と鋭い音を立てる・・・。
この「バチン」という音が舞台に緊張をもたらすとともに、
一種の「狂言回し」的な役目を演じる・・・。
「バチン」という音とともに、
天空に太陽が昇り、松が生え、亀が現れ、鹿が飛び跳ねる・・・という筋書き。
洗練されているとは言い難い影絵劇ではあるが、
その素朴さが、かえって観る側の想像力を掻きたてる。