■ オペラ

aquio2007-01-10

アパートの隣人どうしが、
ベランダで洗濯物を干しながらお喋りをしていた。
きっと隠し事ができないご性格なのであろう、
二人の会話の内容は、
アパートの下を通る私の耳に筒抜けであった。
アパートの壁面に反響しているからとはいえ、
お二人の声の大きさは半端じゃないほど大きかった。
寒さのせいで洗濯物が乾かないという、
愚痴のような会話であった。
アパートから二十メートルほどは離れただろうか、
それでも、お二人の会話の内容はハッキリと聞き取れる。
今度はお互いの亭主の不甲斐なさに話題は移っていた・・・。
アパートから五十メートルほど離れても、
まだお二人の声は聞えてくる・・・。
さすがに話の内容までは聞えなかったが、
「なにもそこまで亭主の悪口を言わなくっても」、と失笑を禁じえなかった。
それにして、
素晴らしく大きく張りのあるお声である。
家庭の主婦で終わらせるには惜しいような声である。
道を間違えられたのではないだろうか。
オペラ歌手にでもなっていれば、
きっと大成されたのではなかっただろうか、と思う・・・。
昨日の朝、職場に向かう道すがらでの出来事。
しかし、そういう意味では、
私の妻も母もオペラ歌手になれる資質は充分にあった、と思う。
今からでも遅くはない。
「その才能を埋もれさせておくのは惜しい!」
「ウィーンにでも行って勉強してこい!」、とでもおだててみようか・・・。
その気になってくれれば占めたもの。
すれば、私は日々心安らかに静かに暮らせる、というものである。