■ フォルクスワーゲンの広告キャンペーン

aquio2007-02-21

自宅の書架を整理していたら、
てとも懐かしい一冊の本が出てきた。
「美術出版社」刊・「西尾忠久」編著による
フォルクスワーゲンの広告キャンペーン」
初版の発行は一九六三年だが、
この本は一九六四年発行の改訂四版ものだった。
私がこの本を購入したのは四十一年前のこと。
私が十九歳の時だった。
大阪梅田の古書店で買い求めた本。
裏には360円という価格が鉛筆で書かれていた。
この本には、「フォルクスワーゲン・タイプ1」、
いわゆる「カブト虫」と呼ばれる車をアメリカに売り込むため、
十七年に渡って制作され続けた広告がまとめられている。
紙面は、上部にモノクロームの写真、
下部にはキャッチ・コピーとその説明文、
という実に簡素なスタイルで構成されている。
このスタイルをまったく変えることなく、
フォルクスワーゲン社」は広告を打ち続けたのだ。
一九四九年には二台しか売れなかった「カブト虫」だったが、
十二年後には二十万台もの「カブト虫」がアメリカを走っていた、という。
当時、私は日本画の勉強をしていた。
友禅の絵師になることを夢見ていたのだが、
この本に出会ってからというもの、
私は日本画に対する興味を急速に失っていった。
広告に使われる文章や写真や絵画・・・。
そのグラフィックの持つ力に魅入られてしまったのだ。
そして、私はグラフィック・デザイナーになることを決意した。
印刷屋、製版屋、画材屋、デザイン事務所・・・。
グラフィックに関係する職場を転々と渡り歩いたものだった。
とても懐かしい思い出・・・。
フォルクスワーゲンの広告キャンペーン」
私の人生を変えた一冊である。