■ 鳥取・その2
電話の呼び出し音で眼が覚める。
私の部屋の電話が鳴っていた。
受話器を手に取ると、
フロントが「Yさんからのお電話です」と告げる。
頭がボケている。
「Yさん?どちらの?」と訊くと、
「H町のYさんとおっしゃっていますが」、と言う。
「はいはい、繋いでください」、と告げるやいなや、
Yさんの焦ったような声が耳に飛び込んできた。
「動かないんです!」
「何が?」
「Nさん(私のこと)が作ったからくりが・・・」
「エ〜ッ・・・、すぐそちらに向かいます」
慌てて衣服を整え、清算を済ませてH町に向かう。
車を運転しながら、Yさんと連絡を取り合う。
「電源板のスイッチは入っていますか?」
「入っています、確認しました」
「ヒューズ・ボックスを確認してください」
「ヒューズは切れていません」
「コンセントは繋がっていますか?」
「コンセントも繋がっています」
何が原因でからくりが動かなくなったのか・・・。
思考の堂々巡りが始まる。
少々焦りを覚える。
車を路肩に止め、煙草に火を点け気を落ち着かせる。
煙草を吸っているうち、その原因に気付く。
「九時まで待ってみてください」、とYさんに連絡する。
からくり人形にはタイマーがセットされている。
九時になれば、メインのスイッチが作動するはず。
メイン・スイッチが作動しなければ、すべてのスイッチが入らない。
勿論、テスト駆動のためのスイッチも作動しない。
九時までにはまだまだ時間がある。
それまで、国道沿いの喫茶店で時間をつぶすことにした。
九時、H町の現場に到着。
テスト用の電源スイッチを押す。
からくりは見事に動き出した。
先ほどは目覚めたばかりで頭が作動していなかった。
タイマーがセットされていることをすっかり忘れていた・・・。
ま、制作の現場ではいろいろなコトが起きるものである。
午後四時、岡山の自宅に向けて出発する。