■ パンとワイン
ジャズを聴きながらワインを飲み、パンを食べる。
私がワインを初めて飲んだのは
今から約五十年ほど前のこと。
私がまだ小学生の頃だった。
その頃のワインといえば、
「壽屋」の「赤玉ポートワイン」のことを差していた。
ワインと名のつく酒は、
「赤玉ポートワイン」しかなかった。
「壽屋」は現在の「サントリー」の前身にあたる。
「赤玉ポートワイン」はとても甘い酒だった。
それを酒とは思わず、
まるでシロップか何かのようにガブガブと飲んだことがあった。
飲み終えた後、
頭が割れるように痛んだことを懐かしく思い出す。
「ヘッセ」の「車輪の下」であったように記憶しているが、
ある小説の中に、
主人公がワインを持って山に登る、というシーンが描かれていた。
中学生になっていた私は、
「ワイン?ワインなんか飲んだら頭が痛なるで!」
「ワイン持って山に登るって、この人はいったい何するつもりやろ?」、
と随分と訝しんだものだった。
あれから五十年・・・。
スピーカーからは「BILLIE HOLIDAY」の
「THE END OF A LOVE AFFAIR」が流れている。
胸が締め付けられるような歌声・・・・。
ワインを飲んで頭が痛くなるようなことはなくなったが、
今夜のように、ワインを飲むと胸が痛む、ことが時々ある・・・。