■ 暇つぶし
桜の花びらの塩漬けを白湯に浮かべて飲む。
春を飲んでいると、
M社のMさんとおっしゃる方から電話が入る。
ご用件を伺えば、
個人投資家向けの商品を紹介したい、と仰る。
会議までにはまだ少し時間がある。
「話だけでも聞いて欲しい」、と仰るので、
話だけでも伺うことにする。
M「現在、金の価格が乱高下しています」
「金の売買のお手伝いをさせていただきたい」
「上手く資産を運用すれば、大きく儲かります」
私「金って、そんなに儲かるの?」
M「はい、そりゃぁもう」
私「でも、君って変わってるね」
M「変わってるって、何がですか・・・?」
私「そんなに儲かるのなら、自分の資産を運用して儲ければいいじゃない?」
「なんで見ず知らずの私に儲け話を教えてくれるの?」
M「・・・・」
そんな遣り取りが続いた後、
M「どうですか、ここはひとつ私を信じてはもらえませんかねぇ・・・?」
私「OK、分かった」
「それでは君の言葉を信じてみよう」
M「有り難うございます」
私「その代わり、君も私を信じてくれなければ、困る」
M「そりゃぁもう・・・」
私「それじゃぁ、私を信じて五千万円ほど貸してくれ」
「その五千万円を君の言うとおりに動かしてみよう」
「で、儲かった金は君と折半ということにしよう」
「大儲けできるぜ」
「どうよ、このアイデアは?」
言ったとたん、ガチャッと電話は切られてしまった。
儲け話を持ちかけてやったのに、失敬な奴である。
会議までにはまだもう少し時間がある。
なかなかに楽しい暇つぶしであった。