■ たらの芽
自宅から職場までの距離はわずか。
今朝は森の中を遠回りして歩いて行くことにした。
森の中から鶯の声が聞こえてくる。
赤松の老木に「ヒトクチタケ」が生えていた。
樹勢が盛んな頃であれば、
木はその肌に異物を寄生させはしないものである。
「ヒトクチタケ」が生えているということは、
この木の寿命は尽きる時にきているのだろう。
「コシアブラ」の盛りは過ぎてしまっていたが、
あちこちで「たらの木」が芽吹いていた。
「たらの木」の「芽」、
いわゆる「たらの芽」は「赤芽」と「青芽」に区別される。
赤っぽく、棘があるのが「赤芽」。
青っぽく、棘のないのが「青芽」。
この辺りに自生する「たらの芽」の多くは「赤芽」であるが、
「赤芽」の方が野趣に溢れる味であるように思える。
今夜のため、幾つかの「赤芽」を採取する。
しかし、近年、「たらの木」の数はめっきりと減ってきた・・・。
毎年、一本の「たらの木」からは幾つかの「新芽」が芽吹く。
しかし、すべての「新芽」を採りきってしまうと、
「たらの木」はすぐに枯れてしまう。
来年のためにも、「芽」は一つだけでも残しておかなければならない。
それが最低のルールなのだが、
都会からやってくる採取者は、その最低のルールすら知らない。
根こそぎ採取していく者も、中にはいる。
昔、庭に咲く「笹百合」を根こそぎ盗られるという事件もあった・・・。
国有・私有の違いはあれ、山には必ず所有者がいる。
山菜で生計を立てていらっしゃる農家もある。
都会からやって来る採取者はそのことを知らないのだろうか。
自分のモノ以外はすべて他人のモノ、なのだが・・・。