■ 台湾・その1
総勢二十一名のグループで台湾に向かう。
台湾を訪れるのは初めてのこと。
午後十一時過ぎ、台北中央駅前のホテルに到着。
台北の空はネオンサインで赤茶色に染まっていた。
バスを降りたとたん、
三十七年前の思い出が鮮烈によみがえる。
東名高速道路が開通した頃、
友人と廃車寸前の車を走らせ、
大阪から東京に旅したことがあった。
東名高速の終点、
用賀インターの手前あたりから右側を見ると、
遠くの空が真っ赤に燃えていた。
「空が真っ赤やで、火事とちゃうやろか?」
「あれだけ赤いねんから、きっと大火事やで・・・」、
などと、そんな会話を交わしながら走っていたことを思い出す。
空が赤かったのは、赤坂の灯のせいであった。
当時、赤坂は東京随一の繁華街であった。
当時は用賀から赤坂の灯が見えたのだ。
ポケットから金を出し合い、赤坂のディスコにも何度か通った。
あのディスコの名前は「MUGEN」、といったと思う。
大卒の初任給が三万円程度であった頃、
「MUGEN」の入場料は一千五百円ほどであった・・・。
歩いてみないことには解らないが、
台北は日本の昭和四十年代の街並みに似ているような気がする。
下水道がきちんと機能していないのだろう、
台北中央駅の近辺には糞尿の臭いがかすかに漂っていた。
臭いには臭いが、なんだかとても懐かしい。
日本においても、
其処此処から糞尿の臭いが漂っている時代があった。
わずか四十年ほど前のことである。