■ 折れる
歯が折れる・・・。
グラグラと不安定に動いていた歯が、
とうとう折れてしまった。
過日、
人ごみの中で出会い頭に人と衝突したことがあった。
眼から火花が散る、とはあのようなことを言うのだろう。
しばらくの間、
あまりの痛さに眼を開けることができなかった。
その時、歯が折れるような音を聞いたが、
表面上はなんともないものの、
どうやら歯の裏側にひびが入っていたようであった。
で、その前歯がとうとう折れる・・・。
奥歯ならまだしも、
一番目立つ前歯であるから始末に悪い。
今朝、歯科医院で治療を受けたが、完治までには少し時間がかかるらしい。
義歯が入るまで、歯抜けの顔を人前に晒さなければならない。
あれやねぇ、前歯の抜けた顔というのは、ほとんど「アホ」やね。
前歯を失くすっていうのは、小学生の頃以来ではないだろうか。
乳歯が永久歯に生え替わる時であるから、
間抜けな顔であったものの、それはそれで可愛いらしいものであったろう・・・。
しかし、還暦を過ぎたジジイの歯抜け顔というのは、
なんとも貧相でいけない・・・。
歯が折れていることを忘れ、今日は昼食にうどんを食べる。
四・五本のうどんを口に入れたら、
一本のうどんがどうしても噛みきれない・・・。
一本のうどんが折れた歯の間からニュルニュルと出てきやがる。
とても情けないのであるが、
なんだかとても可笑しくて、うどん屋で一人大笑いしてしまった。
職員たちに歯の抜けた間抜け面を見せると、
「きゃぁ、可愛い」、と好評であった。
しばらくはこの顔で笑いをとることにしよう。
しかし、十日には某テレビ局の取材を受けなければならない。
困った・・・。