■ 五色の短冊
今日は七夕。
岡山の職場の玄関には、
大きな二本の笹が立てかけてあった。
I君が裏山で採ってきた笹であるらしい。
テーブルの上には色とりどりの短冊も置かれている。
先日、私は前歯を失くしてしまった。
「前歯がはえますように」、と短冊に書いたところ、
「その歳では歯はもう生えませんよ」、
と職員たちがからかうから、
永久歯についてレクチャーしてやることにした。
「あのな、超永久歯って知ってるか?」
「なんですかそれ?」
「永久歯が抜けたあとも稀に永久歯がはえてくることがあるんや」
「へぇ〜・・・?」
「あのな、トカゲの尻尾は切れてもまたはえてくるやろ。あれと同じや」
「へぇ〜・・・?」
「それを超永久歯って言うねん」
もうここまで言ってしまうと、
「このオッサン、どこまで嘘つき通すか見ものやで」、
というような表情が職員たちの顔に見て取れる。
「しまった!」、とは思ったが今さら後には引き返せない。
嘘をつき通すことにする。
「それは遺伝子に関係することですか?」、と訊くから、
「偉い!よく分かったね」、と褒めてやる。
「それでやねぇ」
「へぇへぇ・・・」
「なんや、その『へぇへぇ』っていうのは・・・。もう止めた!」
「そんなこと言わんともっと教えてくださいよ」
「やかましい!」
今夜はアンティーク・オルゴールのコンサートが開かれる。
職場には六十名ほどのお客様がいらっしゃる予定。
二時間ほど喋らなくてはならない。
さて、歯の抜けた口で何を話そうか・・・。
「歯が抜けてます」
「前歯に隙間ができてます」
「今夜の私はとってもハスキー」、とまずは笑いでもとってみようか・・・。
そろそろ六時半。
さて、そろそろ会場に行くことにしよう。