■ 二進も三進も
「館のこれからの方針を検討したい」
「学識経験者のご意見を伺いたい」、
という内容のファックスがQ館から届く。
Q館では、県の職員と市の職員、
そして財団の職員たち、約二十名ほどが働いている。
今から十二年前、
Q館にはT君という優秀な職員がいた。
Q館の基礎は彼が築き上げた、
といっても過言ではないだろう。
しかし、彼がいくら進言しても、
県や市の職員たちは決して現場に出ようとはせず、
エアコンの効いた部屋で書類にハンコを捺してばかりいた。
あれから十二年、
Q館の入場者数は下がり続け、
その運営はにっちもさっちも行かなくなってしまっている、と聞く。
「にっちもさっちも」、漢字では「二進も三進も」、と書くらしい。
「二進も三進も行かなくなったから、何とかしたい」、ということなのだが、
本気で運営を建て直したいと思うのなら、
やる気のない職員たちに出ていっていただくのが一番の早道。
で、「その運営再建会議に出て欲しい」、ということなのだが、
いくら会議を重ねたところで、
現場の意識が変わらないかぎり、運営再建は不可能だろう・・・。
また、神戸からQ館までの距離は往復五百キロもある。
ファックスには、「交通費は実費を支払う」
「謝礼として九千円(税引き後)を支払う」、とも書かれていたが、
一般私企業の感覚とは遠く離れた金銭感覚ではあるね。
女子高生のお小遣いのような金額ではないか・・・。
T県の規定による金額であるらしいが、
それはそっちの都合であり、私の都合ではない。
意義のあることであれば、手弁当ででも駆けつけるのだが、
その「支払ってやるから有り難く頂戴しろ」的書き方にも反感を覚える。
ま、今さら何をやったところでQ館の再建は不可能だろうなぁ・・・。
職員の就労意識、金銭感覚、来館者に対するサービス精神・・・。
すべてにおいて我々の感覚とズレている。
私は学識経験者ではないし、それに関わっている時間もない。
T君がいれば一肌脱ぐことも吝かではないのだが、
そのT君も九年前にQ館を去ってしまっている。
「スケジュールの調整ができない」、そのことを理由に断ることにした。
無駄なことに自分の時間を使いたくはない。