■ VOJTECH KUBASTA

aquio2007-08-26

いつだったか、
「ヴォイチェフ・クバシュタ」の回顧展が
ベルリンやライプチヒで開催されたことがあった。
ミュンヘンのGさんから、
その「クバシュタ展」の展示会目録が三冊届く。
奥付を見る限りでは、
四社ほどの出版社や古書店
十名ほどの個人コレクターの協力があって、
はじめて実現した回顧展であることが分かる。
当然だが、目録はドイツ語で印刷されていた。
知らない単語(ほとんど知らない)を飛ばしながら、
「Der Buchkunstler Vojtech Kubasta」、
つまり、「絵本作家/ヴォイチェフ・クバシュタ」
と印刷されたページを読んでみると、
「クバシュタ」は一九一四年十月七日にウイーンで生まれている。
オーストリア生まれではあるが、
その生涯のほとんどをチェコプラハで過ごした、と記されていた。
最初は建築工学と機械工学を学んでいたらしいが、
一九四一年には、コマーシャル・アートの分野に進んだらしい。
しかし、当時チェコを占領していたナチの思惑により、
「クバシュタ」はプラスティック製品の製造に関わらざるを得なくなる・・・。
「クバシュタ」が最初に制作した飛び出す絵本は「赤頭巾ちゃん」。
第二次世界大戦終了後、十一年経った一九五六年のことだった。
つくづく、出版とは平和産業であると思う。
戦時下においては、本は権力者たちの思惑でその表現が規制されるものである。
しかし、「クバシュタ」が制作した数々の飛び出す絵本は、
外貨獲得のために印刷されるに留まる・・・。
決してチェコの子どもたちのためには印刷されなかった、という。
国策としての飛び出す絵本、であったのだ・・・。
「POP-UP Die dreidimensionalen Bucher des Vojtech Kubasta」、
「ヴォイチェフ・クバシュタの立体的絵本」には、
百冊を超える「クバシュタ」の絵本が紹介されていた。
「クバシュタ」研究者にとっては一級の資料ではあるね。