■ Tさん
午前八時半、神戸の街に向かって出発。
九時半、「ヒリック」さんと通訳のTさんをお乗せし、
神戸の職場に向かう。
午前十一時半、
「ヒリック」さんと通訳のTさんをお乗せし、
新幹線の新神戸駅までお送りする。
午後六時、岡山の自宅に向けて出発。
今夜はTさんとCさん一家が泊まりに来る。
Tさんとのお付き合いは三十年ほどになるが、
ここ十年ほどの間、お互いの音信が途絶えていた。
先日、双方の友人であるCさんから連絡があった。
「Tさんの身体が癌に犯されている」、というのだ。
「ご飯が食べられない」「お酒が飲めない」
「声も出ない」、状態にあるという・・・。
ひょっとしたら、
三人が顔を合わせるのも、今夜が最後になるかもしれない。
午後八時、我が家に到着。
思いの外、Tさんは元気そうであったが、
あれほど頑丈であったTさんの身体は、
まるで針のように痩せ細っていた・・・。
Tさんは声が出せない。
Tさんの言いたいことは筆談に頼るしかなかったが、
夜が更けるまで昔話に花が咲く。
奥さんに言わせると、
「今夜はとても体調がいいみたい」、ということであったが、
日々、その体調には大きな波があるらしい・・・。
七年前の七月七日、七夕の夜、
私の親友であったHが癌で死んでいった。
六年前の五月五日、子どもの日、
もう一人の親友であったKが、やはり癌で死んでいった。
歳をとると、人との別れが骨身に応える。
「ヒリック」さんから聞いた話によると、
二〇一〇年には、スイスの某製薬会社から画期的な癌の新薬が発売されるらしい。
その薬が万人に効くかどうかは分からないが、
それまで、なんとかTさんには生きていていただきたい・・・。
一縷の望みではあるが、心から、そう思う。