■ 講義・二日目
今日からK芸工大における講義が始まる。
時間は午後二時四十分から六時までの約三時間。
打算的というか、この世知辛い時代において、
好きな木工で身を立てて生きていきたいと、
私の講義を受けに来た学生は五名であった。
しかも、全員が男子学生。
工房にはいろいろな機械が揃っているが、
電動の糸鋸機は五台しかない。
従って、数的にはピタリと合致するのであるね。
その五名を前にし、
様々な積み木やぬいぐるみを例にしながら、
まずは「おもちゃの概論」「遊びの概論」をレクチャーしていくことから始める。
陶芸や金工を学ぶ学生達が物珍しげに窓の外から眺めている。
気が付けば、
私の講義を聴いている学生の数は十二名に増えていた。
間に二十分ほどの休憩を入れるには入れたが、
三時間もの長丁場を全力で喋り続ける、というのは本当に疲れる。
しかし、集まってくれた学生たちは、実にいい子どもたちだった。
その素直さが、実にいい。
擦れていないというか、実にピュアな子どもたちであったが、
逆に、ピュアであるが故に、
「世間に出てこれでやっていけるのだろうか?」、
と感じさせる線の細さもある・・・。
余計なコトではあったが、「経済」についてのレクチャーもすることにした。
もとより、金儲けのために木工家になりたいという子どもたちではない。
木工が好きだからこの道に入ってきたのであるが、
経済の感覚がなければ、物事は成り立っていかない。
その経済についての感覚も希薄なものであった。
まだまだ親の庇護のもとから抜け出せていない・・・。
しかし、本人の経済感覚がゼロであっても、
立派に生きていける道が一つだけある。
要は、素晴らしいデザインの作品を世に問えばいいのである。
本人に能力があれば、その能力を世間が放っておくはずは、ない。
その能力を世に出してやろうとする人間、
その能力を利用してビジネスに繋げようとする人間・・・。
能力のある人間の周りには、また様々な人間が群がってくるものである。
ま、そんなコトを喋ってはみたが、どこまで理解できただろうか・・・。
次回の講義は十月三日。
楽しみなことではあるね。