■ ブローカー
九月二十五日の日記に、
山梨にお住まいの武珍さんからコメントが寄せられる。
その寄せられたコメントで思い出した出来事。
数年前、からくり人形の制作依頼がP社からあった。
F市の仕事であったが、
今もそのからくり人形は元気に働いてくれている。
過日、そのF市のTさんと酒を飲む機会があった。
仕事を通じて気安い仲になったのだが、
その酒の席上、
「あの仕事はいくらで請け負った?」、
といきなりTさんが訊いてきた。
「商道徳っていうのがあるからね」
「その金額を君に明かすワケにはいかない」、と答えると、
「F市はあの仕事に八百万円を計上した」、と言う。
金額をあからさまに言ってしまうTさんもどうかと思ったが、
Tさんは相当に酔っ払っていたから、
ま、時効、ということにしておこう・・・。
しかし、その金額を聞いて驚いてしまった・・・。
私が請け負った金額は、その半分もなかったのだ。
大阪のU社がその仕事の元請けであり、
P社はその下請けであった。
まず、U社が請け負った金額から三割の利益を取り、
P社が残った中から三割の利益を取った、と計算すると、
ちょうど、私が請け負った金額と合致する・・・。
では、この仕事についてU社とP社は何をしたか、というと、
ほとんど何もしていない・・・。
「文句があるなら自分で仕事を取ればいいじゃないか」
「俺達は君に代わって営業をし、君に仕事をあげたのだから」
それがP社とU社の言い分であることは百も承知だが、
それでは企業人としての哲学が無さ過ぎるような気がする。
「まずは仕事」ではなく、「まずは利益」なのであるね。
ほとんど何もしないのであるから、その利益率はとても高い・・・。
仕事が上手くいけば、その手柄はU社のものであり、
仕事が失敗すれば、その責務は私が負うことになる。
ま、そんなことは百も承知で仕事に臨んでいるのだし、
受けた仕事について、後でとやかく言うのも男らしくないとは思うが、
予算が少なかったため、
やろうとして出来なかったことが山ほどあった・・・。
結局のところ、
不利を受けたというか、割を食ったのはF市であり、
F市が支払った制作代金は税金で賄われているのである・・・。
「税金を払う人間と税金で飯を食う人間、そして税金を食い物にする人間」
「世間にはその三種類の人間しかいない」、
とそう言ったのは、あの「立花隆」だった。
「まずは自分の利益」
他人の利益など一々気にしていたのでは、会社は大きくならないし、飯も食えないのだろう。
ブローカーが幅を利かせる実に嫌な時代ではあるな・・・。