■ 生放送
地元のFM局に出かける。
今月から、第一金曜日午後四時からの番組に、
レギュラーとして出演することになった。
おもちゃの話、子どもの頃の話、
友達の話、家族の話、恋の話・・・。
「とにかく、何でもいいから喋れ」、
と局のMさんが言うので引き受けたのだが、
あれだね、結構、緊張するものであるね。
緊張したことなど過去に一度もないのだが、
生放送であるから、滅多な言葉は使えない。
いわゆる「放送禁止用語」。
生放送であるから、後で修正がきかない。
私はラジオやテレビのプロではないから、
そのあたりのことはほとんど知らない。
知らないから、うっかり言ってしまうことがあるかもしれない。
私にその話を持ちかけたMさんも無謀だが、
引き受けた私も無謀といえば無謀・・・。
危険な匂いのする言葉は努めて使わないようにしたのだが、
例えば、「片手落ち」などの言葉も使えないという。
こんな時には、「配慮が一方だけに偏っていますね」、
とかなんとか言わなければならない、らしい・・・。
「面倒くさいなぁ」、なのであるが、
引き受けた以上は、Mさんのためにもいらぬトラブルは避けなければならない。
「それやったら、言葉の後に『ピー』とか言ったらええんとちゃうん?」
「言ったしまった後で『ピー』って言っても遅すぎます。生放送なんですから」
「言うてしもた後でも、『アッ、今の言葉はピーです』って訂正したらええやんか?」
「あきません!」
「ふ〜ん、それやったら、セックスに関する話題も駄目なん?」
「当然です!」
「何を喋ってもかまへん、って言うたやんか!?」
「駄目なものは駄目です!」
「でも、セックスって人間の存在の根源に関わる問題やで!」
「根源であろうとなかろうと、駄目なものは駄目なんです!」
「喋った後で『ピー』って言ったらええやんか?」
「だからぁ、喋った後で『ピー』って言っても駄目なんですって!」
まるで漫才のような会話であったが、
放送前の会話を生で流した方が良かったかもしれない。
ひょっとしたら、その方が聴取率が上がったかもしれない・・・。