■ 手作り
作品を展示するとともに、
「神戸ビエンナーレ」の会場において、
毎日、私はワーク・ショップを開催している。
ワーク・ショップのタイトルは、
「端材で作る動くおもちゃ」。
今日、小さな子どもを連れた母親がやって来る。
「先生、お願いしますぅ」
「何をですか?」
「この子におもちゃ作りを体験させたいんですぅ」
「このお子さんは何歳ですか?」
「二歳ですぅ」
「それはいくらなんでも無理でしょう!」
「でも、どうしてもお願いしたいんですぅ」
「おもちゃで遊ぶ年齢であっても、おもちゃが作れる年齢ではない、と思いますが・・・」
「どうしてですかぁ?」
当たり前の意見が通らないようである。
さっさと作って、さっさと帰っていただくことにした。
「この木をこう切って欲しい」とか、
「この丸い棒をこの長さに切って欲しい」とか、
予想したとおりの要望が次々と出てくる・・・。
一時間もしないうち、二歳の子どもは床の上でスヤスヤと眠りだしてしまった。
「それ見たことか!」、なのであるね。
結局は、一から十まで、私がおもちゃを完成させなければならなかった。
眠っている子を揺り起こし、
「ほうら、Aちゃん、先生がこ〜んなに素敵なおもちゃを作ってくださったわよぉ」、
と母親はぬかしておったぞ。
次に、一人の中年の女がやって来る。
「先生、私、先生の作られたこの『魔女』のおもちゃを作りたいんです」
「このおもちゃを作るには、私でも一日はかかってしまいます」
「でも、作りたいんです」
「二時間という限られた時間の中で、それは無理じゃぁないですか・・・?」
「でも、私の娘は『魔女』が大好きなんです」
「俺の知ったことか!」、と言いかけたが、
さっさと作って、さっさと帰っていただくことにした。
これが美しく清楚な女性であったり、肉感的ないい女であれば、
手取り足取り教えることも吝かではないんだけどね・・・。
下心丸見え、なのであるが、
結局は、一から十まで、私がおもちゃを完成させなければならなかった。
いや、今日は実に有意義な手作りおもちゃ教室であったな。
近頃は、こんな手合の親が、実に多い。