■ 忘却

aquio2007-11-27

「忘却とは忘れ去ることなり」
「忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」。
あの「君の名は」の冒頭に流れていたナレーションだが、
同じ頃、「忘却とは忘れ去ることなり」
「忘れ得ずして思い出せない歳の悲しさよ」、
と言って笑わせる漫才師がいた。
祖母にそれらのフレーズの意味を訊ねると、
「君の名は」の方の意味は、
「忘れられないことでも、忘れなくてはならないことがある」
そして、漫才の方の意味は、
「歳をとったら人はもの忘れがひどくなるもの」、と教えられた。
子どもであった私にはその意味がまったく理解できなかったが、
どういうワケかそのフレーズを今まで忘れずにきた。
しかし、近頃は本当にもの忘れがひどくなってきたなぁ・・・。
正しく、「忘れ得ずして思い出せない」の歳になってしまった。
今、午前十一時半を少し過ぎたあたり。
そろそろ東京に向けて出発しなければならない。
「明日は時間があるから東京見物でもして帰ろうか」、
などと考えていたのだが、
ふと手帳を見てみると、
「2:30〜芸工大」「19:00〜M保育園」、とそこには記入されていた。
芸工大における講義があることをすっかり忘れていた。
M保育園の園長と会う約束があることをすっかり忘れていた。
芸工大における講義は午後二時半から六時まで。
六時に講義を終了し、
そこから車を走らせれば七時には三宮に着ける、
とそう計算したことをすっかり忘れていた・・・。
以前は忘れたフリをするのが得意技であったが、
近頃は本当に忘れてしまうから、嫌になる。
その上、近頃は手帳を見ることすら、忘れてしまう・・・。
さて、そろそろ出かけることにしよう。
明日は早い時間の新幹線で帰らなくてはならない。
そのうち、「ここはどこ?私は誰?」、ということになるのだろうか・・・?