■ 散髪

aquio2007-12-21

咳がなかなか止まない。
大根の絞り汁でも作ろうか、と思っていたら、
Kさんが大根の蜂蜜漬けをアトリエに届けてくださる。
熱い湯で三倍ほどに薄めて頂戴する。
大根をカリカリと齧ってくいるうち、
身体がポカポカと温まってくる。
洗面所に立つと、
病み上がりのジジイの顔が鏡に映っていた。
無精髭も伸びていれば、髪も伸びている。
鬱陶しいったらありゃしない。
風邪をひいている時に散髪はどうか、とも思ったが、
思い切って髪を切ることにした。
で、馴染みの散髪屋に予約を入れる。
「午後六時半頃ならなんとかなる」、という返事。
「どのくらいの長さに収めますか?」、とJさんが訊くから、
「バッサリとやってちょうだい」、と答える。
Jさんと世間話を交わしているうち、ウトウトと眠りに入ってしまう。
目が覚めると、いつもとは違う頭の自分が鏡に映っていた。
昔、私が高校生であった頃、
当時通っていた高校は、
三年生の二学期になるまで髪を伸ばすことが許されていなかった。
丸坊主の状態で二年と少しを過ごしたのだが、
当時、私の髪は「タワシ」と揶揄されるほど量が多く、そして硬かった。
二学期に入るとともに、同級生たちは一斉に髪を伸ばし始めていたが、
髪を伸ばした私の頭は、まるでデッキ・ブラシのようであった・・・。
格好良く整髪された同級生たちの頭が羨ましくもあったが、
あれから四十余年、同級生たちの頭はほとんど茶瓶になってしまった。
「タワシ」だったおかげで、私の頭にはまだまだ髪がフサフサと残っている。
ま、「人間万事塞翁が馬」ということなんだろう。
午後九時、アパートに帰る。
髪を切ったせいで、首筋に寒気を覚える。