■ スタッドレス・タイヤ

aquio2008-01-25

今から三十年ほど前、
まだスタッドレス・タイヤなど存在しなかった時代、
アメリカの某タイヤ・メーカーから、
「ICE COMPOUND/アイス・コンパウンド
という名前のタイヤが発売されたことがあった。
「雪道を走るために開発された新素材を使ったタイヤ」、
という触れ込みであった。
現在のスタッドレス・タイヤの先駆けとなる商品だった。
当時、長野県の白馬村に住んでいた私は、
早速その「アイス・コンパウンド・タイヤ」を購入した。
あれは十一月の下旬であったと記憶しているが、
友人のO君を助手席に乗せ、
白馬村から二十キロほど離れた信濃大町に出かけたことがあった。
時間は朝の十時ころではなかったか、と思う。
青木湖の少し手前、
佐野坂のトンネルに差し掛かる橋梁上で、
五台前を走っていた車がいきなりスピンを起し、橋桁に激突していった。
追突を逃れようと、後続車の列は次々とブレーキを踏んだのだが、
その急ブレーキがいけなかった。
五台の車が次々と玉突き衝突を起こしてしまい、
その五台の車の列に、私が最後に突っ込んでいった。
六台玉突き衝突・・・。
そこに至るまでの道路には何の異常もなかったのだが、
橋梁上の道路だけが薄っすらと凍結していたのだった。
目視では確認できないほどの薄氷だった。
幸い全員に大きな怪我はなかったが、
ま、警察は来るわ、救急車は来るわで、その後始末が大変だったな。
「雪道用のタイヤであっても過信は禁物」、
それがあの事故で学んだ教訓だった。
今朝、スタッドレス・タイヤを装着した車で岡山の職場に向かう。
ホイールはハブ・ボルトとナットで締め付けられているが、
気をつけていないと、
付け替えたばかりのホイールは、その締め付けが緩むことがある。
万一のことを考え、約八十キロのスピードを保ちながら中国道を西に向かう。
あの事故から三十年ほど経った。
スタッドレス・タイヤの性能には格段の進歩がみられるが、
はやり、過信は禁物である、と思う。
ブレーキを踏まず、エンジン・ブレーキを多用しながら車を走らせる。