■ 講義・十一日目
K芸工大における講義十一日目。
「自分でデザインしたからくり人形を自分で作る」、
という課題を与えておいたのだが、
講義が始まる前から、
学生たちは脇目も振らずに木と格闘していた。
なにしろ、
これを仕上げないことには単位がもらえないのであるから、
学生たちも必死にならざるを得ない。
ま、学生のほとんどは真面目な男の子たちなのだが、
休みがちな学生が一人だけいる。
講義を受ける態度もいい加減といえばいい加減。
訊くと、
私の講義だけではなく、他の教授陣の講義にも興味が持てない、と言う。
課題を出されても、何から何をどう処理したらいいのか、
その方法すら思いつかない、と言う。
「課題を仕上げへんかったら単位はやられへんで」、と言うと、
「何とかなりませんか」、と交渉してきやがる。
「君はアーティストを目指すより、商売人を目指した方がええんとちゃうか!?」、と言うと、
「はぁ、皆からそう言われますわ」、と平然と答えやがる・・・。
「君なぁ、君がどこかの会社に就職したと仮定してみようや」
「な、会社に行くのは嫌い」
「上司の命令を聞く耳は持たない」
「しょっちゅう無断で欠勤する」
「それでも給料は欲しい」
「な、君のとってる態度はそれと同じや」
「働かへん奴に給料はやられへんねん!」
「分かったか?」
「分かったらサッサと課題に取り掛からんかい!」
ナイフの研ぎ方、木の削り方、からくりの仕組みだけではなく、
学生たちにはいろいろなことを教えなければならない。
是く言う私にもずいぶんといい加減な部分がある。
いろいろなシーンで、
「自分のことは棚の上に置きやがって!」、
などと陰口を叩かれているのは十分に承知之助、なのではあるが、
K芸工大の講義に限って言えば、
私は講師であり、学生たちは学生である。
決して同格ではない、のである。
「先生も結構いい加減やんか」、などと言われた時など、
「そやから何やねん?」、で済ませてしまうに限るのであるね。