■ 反塊丹

aquio2008-04-12

新潟から神戸に帰る途中、富山駅で下車し、
義弟のM君が経営するイタリア・レストランに向かう。
M君の奥さんは私の妻の妹にあたる。
現在、私の息子のSもイタリア・レストランを経営しているが、
SはこのM君のレストランで七年間の修行を積んだ。
反りが合わないというか、
SにとってM君は天敵のような存在であったが、
嫌がるSを車に無理やり乗せ、
「息子を頼む」、とM君のレストランに放り込んだのは、
今から十二年ほど前の冬のことだった・・・。
それから七年、
言葉遣いから行儀作法に至るまで、
SはM君から徹底的にしごかれて神戸に帰ってきた。
Sにとっても、私にとっても、M君は大の恩人なのである。
久しぶりの富山。
町の佇まいは昔とそうは違って見えない。
適当に田舎、適当に都会、という佇まいに好感が持てる。
M君と会うのも本当に久しぶり。
お互い髪に白いものが混じる歳になった・・・。
美味い石鯛のソテーに舌鼓を打ちながら、お互いの近況を確かめ合う。
列車の時刻が迫ってきた。
別れの挨拶もそこそこに、タクシーで富山駅に向かう。
駅の売店で、腹痛に効く「反塊丹」等を購入し、職場への土産とする。
子どもの頃、一年に一度か二度であったと思うが、
我が家にも富山の薬売りが訪れていた。
薬売りがくれる「紙風船」が嬉しかった・・・。
薬売りがやって来ると、
越中富山の反塊丹、鼻くそ丸めて万金丹」、などと子どもたちは囃したてたものだった。
妻にその話をすると、
妻が住んでいた町内では、「越中富山の万金丹、鼻くそ丸めて黒仁丹」、であったらしい。
鼻くそが黒い・・・?
妻は空気の汚れた町に住んでいたのだろうか。