■ からくり塾

aquio2008-05-17

岡山の職場で「からくり塾」が始まる。
塾を始めて三年目の今日、
十四名の方々が遠くから参加してくださる。
今回の「からくり塾」のモチーフは「腹ペコ・ヴァンパイア」。
ヴァンパイアを乗せたコウモリが翼を広げると、
その差渡しは一メートル三十センチを超える。
また、眼に見えない箇所の部品まで加えると、
その部品の総数は優に四百個を超える。
私がデザインしたからくりの中でも、
この「腹ペコ・ヴァンパイア」は大型の部類に入る。
まず、からくりの土台となる箱の製作から取り掛かったのだが、
簡単そうに見えて、箱作りほど難しい作業は、ない。
四枚の板の角度を四十五度に切りそろえ、
その四枚の板を指し合わせて箱を組み立てる。
これがなかなか理屈通りにいかないのであるね。
四十五度に板を切りそろえても、
どういうワケか、どうしても四隅の合わせ目が開いてしまう。
で、角度を四十五度より心持ち大きめにとって貼り合わせると、
どういうワケか、箱の四隅は九十度にピタリとおさまる。
この「心持ち大きめ」というのが、数値には表しにくいのである。
ある「指物師 / さしものし」に訊いたところによると、
「心持ち大きめっていうのは、心持ち大きめのことや!」
「角度なんか一々測ったことあれへん!」、ということであった。
箱作りはもともと「指物師」の仕事。
指物師」という職業があるほど、箱作りは難しい仕事なのである。
しかし、からくりの制作には、指物だけでなく、様々な職業の技術が要求される。
からくりに色を塗る場合には、塗師の真似事をしなければならないし、
紙を使う場合には、経師の真似事をしなければならない。
それぞれの仕事を極めることなど、土台無理な話ではあるが、
ある程度までの技術を持っていなければ、からくりは作れない・・・。
仕事にはそれぞれに「骨 / コツ」というものがある。
今日から月に一度、七ヶ月にわたって一台の「腹ペコ・ヴァンパイア」を作る。
塾生の方々には、からくり作りの「骨の骨」をお伝えしたい、と考えている。