■ 整理・その35・マグカップ

aquio2008-06-23

いつも何気なく使っているマグカップだが、
思い返してみると、
実に、三十五年間も使い続けていることに気付く。
コーヒーを飲むため毎日のように使っているが、
もともとは絵筆を入れるための容器だった。
上野の「金華堂」という画材屋で買い求めたもの。
その頃、私は地下鉄銀座線末広町駅の近くに勤めていた。
末広町と青山三丁目の間を行ったり来たりする毎日だったが、
「金華堂」にはよく足を運んだものだった。
画材屋の、あの何とも言えない雰囲気が好きだった。
場所は御徒町駅の東側、昭和通りに面した辺り。
末広町の交差点から北に向かい、
JRのガードをくぐって昭和通りに突き当たった辺り、だったと思う。
いや、実に懐かしい・・・。
会社の近くには、「練成公園」という名の小さな公園があった。
昼飯を食べた後など、天気のいい日は、この公園のベンチで本をよく読んでいた。
会社のビルの前には小さな内科の医院があった。
この内科医は九官鳥を飼っていて、
九官鳥を入れた籠は玄関の下駄箱の上に置いてあった。
医院の扉が開いている時など、よくこの九官鳥と遊んだものだった。
その九官鳥は「咳」の真似が実に上手く、
「ゲホゲホ」とか「コンコン」とか、人間の「咳」の音をよく真似ていた。
私が九官鳥の前で「ゲホゲホ」とやると、
九官鳥は、「どうしました?」、と院長の声を真似て返してくる。
で、「ありがとうございました」、と声をかけると、
九官鳥は「お大事に」、と受付の女性の声を真似て返してくる。
それが面白くて、よくこの鳥をからかったものだったが、
からかっていたのか、それとも、からかわれていたのか・・・。
「金華堂」で買い求めた筆入れでコーヒーを飲みながら、
若かった頃のことをいろいろと思い出す。