■ DESSIN /デッサン

aquio2008-06-26

一昨夜はトア・ロードの「MOKUBA」において、
親しい知人たちとコーヒーを飲む機会を得た。
そのことは昨日の日記にも書いたが、
あれは十時半頃だったろうか、
いかにも場馴れした感じの一組の男女が店に入ってきた。
店は空いていたから、嫌でも彼らの会話が聴こえてくる。
彼らの会話の中に、
「デッサン」という言葉が何度も聴こえてきた。
美術、またはギャラリーの関係者か、とも思ったが、
どうやら違う・・・。
更に耳を澄ましていると、
三宮にあった「デッサン」という名のバーの関係者である、と分かる。
「デッサン」は神戸で五十年ほど続いた名店中の名店。
グリコのおまけのデザイナーであった加藤とも、
この「デッサン」には足繁く通ったものだった・・・。
店の壁には、あの「鴨居玲」のデッサンが多数飾られていた。
店主のMさんにお訊きしたところによると、
鴨居玲」も足繁く通っていた店である、という。
「鴨居」は何度も自殺未遂を繰り返した後、
五十七歳という若さでこの世を去ってしまうが、
死の前夜も、この「デッサン」で酒を飲んでいた、という。
女性は、その「デッサン」の経営者であったMさんのお嬢さんであった。
立ったままではあったが、お父さんの思い出話を交わしているうち、
「あかん、私いろいろと思い出してもう泣きそうやわ」、
と言い残し、お嬢さんは「MOKUBA」を去っていかれた・・・。
Mさんは三年前に鬼籍に入ってしまわれたとのこと。
以来、「デッサン」は閉まったままになっている。
短いようで長い人生。
時にはこのような出会いもある・・・。