■ オルゴール
今から十八年前に、
弘前にお住まいのTさんの依頼でお作りしたオルゴール。
今日、そのオルゴールが戻ってきた。
「修理の依頼かな?」、と添えられていた手紙を読むと、
「十八年前に孫娘へのプレゼントとして作ったいただいたもの」
「その孫娘も立派に成人し、今は社会人として働いている」
「思い出の品だが、もう誰も手にすることはなくなってしまった」
「作っていただいた方にお戻しするのがいい、と判断した」
「そちらのコレクションに加えていただきたい」
「このオルゴールのためにはそれが一番いいように思う」、
とそこには書かれていた。
また、「ご連絡はご無用に願います」、とも書かれてあった。
大事に使われていたのだろう、
オルゴールには傷一つついていない・・・。
使われなくなった後も、
きっと大事に保管されていたに違いない。
いつかはそのお嬢さんも結婚されるだろうし、
いつかはそのお嬢さんに子どもが授かることもあるだろう。
そのお嬢さんが持っていてくださればいいのに、と思うが、
「連絡は無用」ということであるから、それ以上は詮索しないことにした。
しかし、それではこちらの気が済まない。
いろいろと考えた末、
「コウノトリ」のオルゴールをお送りすることにした。
マッチ箱のラベルに赤ちゃんのイラストが描かれていて、
マッチ箱の中箱をスライドさせると、
オルゴールの音とともに箱の中から「コウノトリ」が現れる、という仕掛け。
十年ほど前にデザインしたオルゴールだが、
今は「ザイフェン」に住むおもちゃ職人、
「WOLFGANG WERNER / ヴォルフガング・ヴェルナー」が作ってくれている。
オルゴールの曲は何がいいだろうか?
「ブラームスの子守唄」はどうだろう?
「シューベルトの子守唄」もいいかもしれない。
どちらにしても、明日中には手紙を添えてお送りすることにしよう。