■ 乙姫

aquio2008-10-18

ピノキオが筏に乗って海を漂流していたり、
鯨の口の中でゼペット爺さんが魚釣りをしていたり、
鯛の背中で恵比寿が長靴を釣り上げていたり、
亀の背中に浦島太郎が乗っていたり、
玉手箱を開けると浦島太郎が爺さんになったり、
乙姫が浦島に手を振っていたり、
ガリバーが何艘もの帆船を引っ張っていたり、
難破した船から人魚姫が王子様を助けていたり・・・。
横幅二メートル、奥行き二メートルの舞台の上で、
海にまつわる物語をからくり人形で表現しようとしている。
H百貨店から制作依頼を受けたからくり。
T君とH君が作ってくれたプロトタイプによって、
その動く仕組みは検証済みなのだが、肝心の人形のデザインに梃子摺っている。
ガリバーのコスチュームはどのようなものであったのか、
また、その時代の帆船はどのような形状であったのか、
恵比寿はどのような帽子を被っているのか、
大黒はどのような鬚を生やしていたのか、
浦島太郎が着けていた腰蓑はどのような形であるのか・・・。
クリアしなければならない問題が山積している。
一つずつ潰していくしかないのだが、
どうにもこうにも、乙姫のデザインが決まらない。
昔、私が中学一年生であった頃のこと。
クラブ活動を終えて友人宅に向かう途中、
千日前という繁華街を抜けて行こうとした時、
あるキャバレーの中から、
下着が透けて見えるネグリジェを着たホステスが飛び出してきたことがあった。
ほとんど裸の女性の姿を見たのは初めてのことであったし、
何より、その髪型が強く印象に残ったのだった。
友人宅に着くなり、
「あんな、ネグリジェを着た女の人が飛び出して来よってん」
「下着が透けて見えててん」
「ほんでな、その人の髪型がな、絵本に出てくる乙姫様にそっくりやってん」、
とまあ、そのようなことを友人に興奮して告げたことを思い出す。
その時の印象がよほど強く残っているのだろう。
少しでも線を間違うと、乙姫が「キャバレー竜宮城」のホステスのようになってしまう。