■ 講義・その3

aquio2008-10-29

今日はK芸工大における講義の四日目。
学生たちには、
垂直方向の回転を水平方向の回転に変換する、
いわゆる「ピン面歯車」の制作を課題として出していた。
大きな円盤には六十本の軸を、
小さな円盤には十本の軸を植えつけるという作業。
三百六十度の円盤を六度ずつに分割し、
そこに直径二ミリの軸を垂直に六十本植えつけるという、
緻密さを要求される作業なのだが、
ほとんどの学生は、その作業を完全にしてのけていた。
「どうしてこのように綺麗に仕上がったのか?」、と訊くと、
「軸を円盤に垂直に植えつけるための道具を作った」、と言う。
その道具を見せてもらうと、
なるほど、簡単ではあるが実によく考えられている。
「作り方を誰かに教えてもらったのか?」、と訊くと、
「仲間と相談して作った」、と言うではないか。
高い完成度を要求されるモノを作るためには、
その精度を高めるための道具が別途必要になってくる。
その道具のことを「冶具 / JIG」と呼ぶが、
その「冶具」という言葉すら知らない学生たちが「冶具」を作ったのだ。
「よ〜くこれを考え付いたねぇ〜」、と学生たちを褒める。
で、そのご褒美として、
「このピン面歯車を利用したからくりのアイデアを来週までに提出するように」、
と学生たちに課題を出すことにした。
学生たちは「ギャ〜」と悲鳴を上げていたが、
なに、課題を提出しなければならないのは学生たちであるから、
私はちっとも痛くも痒くもないのであった。
午後六時、
帰り際になって、A君が「この大学の中で先生の講義が一番楽しい」、と言ってくれる。
「なんで?」、と訊くと、
「自分で考えて答えが見つかった時はとても嬉しい」
「先生は僕らに考えさせるから」、と言ってくれた。
「わ〜い、褒められちゃった!」なのであるね。