■ 恵比寿と大黒

aquio2008-11-08

H百貨店における大型からくりの制作を急いでいる。
幅二メートル、奥行き二メートルのからくりだが、
その最上段には、
恵比寿と大黒のからくりが乗ることになっている。
鯛に乗って釣り糸を垂れる恵比寿と、
同じく、鯛に乗って長靴を釣っている大黒のからくり人形。
鯛の胸びれが上下に動き、尾びれが左右に振れる。
眼はキョロキョロと回転し、
口は上下にパクパクと動く、というからくり。
西宮にオープンする百貨店であるから、
最初にお話があった時、
「西宮ちゅうたら『えべっさん』でんな!」
「ほな、『えべっさん』をモチーフにしたからくりを作りまひょか」、
と冗談で言ったら、
その冗談がすんなりと企画会議を通ってしまった。
関西では「恵比寿」のことを親しみを込めて「えべっさん」と呼ぶ。
瓢箪から駒が出たような話・・・。
昔、西宮には、
「恵比寿かき」、または「恵比寿まわし」と呼ばれる人形遣い
いわゆる「傀儡師・くぐつし」の一団が存在した。
恵比寿が鯛を釣る真似をし、正月に豊漁を予祝した人形劇だが、
後年、この「恵比寿かき」が「人形浄瑠璃」に発展した。
人形浄瑠璃の人形は一種のからくりであるから、
その西宮のために恵比寿のからくりを作るという話は、
少しも無理がないように思える。
また、新規開店の百貨店に納めるからくりであるから、
めでたさの意味を込め、鯛には「青海波」の紋様を描くことにした。