■ M君

aquio2004-12-08

おもちゃデザイナーのK君と、
神戸市にあるH授産所に出向く。
知的障害を持つ子どもたちが集う施設。
施設の職員の指導のもと、
子どもたちは
ここでいろいろな木工製品を作り、
契約している施設や商店に販売している。
木工所の入り口に象のおもちゃを見つける。
「誰がこの象を作ったの?」と尋ねると、
M君が作ったという返事。
象の鼻の付け根に蝶番が付いていて、
揺らすと、鼻がユラユラと揺れる。
なんとも不格好なデザインだが、
一途に、ただただ直向きに作った子どもの姿が見える。
稚拙だが、実に美しい・・・。
「この象をオジサンに売ってくれる?」と訊くと、
「一万円」という返事。
「ちょっと高いなぁ」。
「じゃぁ、十万円」。
「もっと安くして欲しいなぁ」。
「それじゃぁ千円」と、一気に安くなる。
からかわれているのではなく、
どうやらM君には数の概念が無いらしい・・・。
「オジサン、その象、好き?」と訊くから、
「ウン」と頷くと、
「それじゃぁ、あげるよ」と、言う。
後日、私の作品と交換することを約束し、
M君から象を頂戴する。
宝物が一つ増える。
一点の曇りも無い純粋な魂に触れる。
心が洗われるようなひとときだった。