■ 二ベア

aquio2004-12-17

鞄職人のTは神奈川県K市の出身だが、
離婚騒ぎのドサクサに嫌気がさし、
プイと家を飛び出して新潟県に引っ越し、
新しい女房と所帯を持った。
その後、
離婚騒ぎのドサクサに嫌気がさし、
プイと家を飛び出して群馬県に引っ越し、
新しい女房と所帯を持った。
そのTがフラリとやって来た。
神奈川県I市に引っ越したらしい。
「また新しい女房でもできたのか」、
「最初の女房と縒りが戻ったのか」、と笑うと、
「いや、俺ももう歳だべぇ」
「今の母ちゃんはいい女でよう」、
「やっぱ、生まれ故郷がいいんだわぁ」という返事。
動物の帰巣本能のようなものか。
そのTから、
鞄や靴の簡単な手入れ方法を伝授してもらう。
皮の表面に満遍なく「二ベア」を指で擦りつけ、
柔らかい布で磨く・・・。
これだけのことで、
皮の風格が増し長持ちするのだそうだ。
「人間の皮も馬の皮も同じだべぇ」とはTの弁。
二ベアを購入して早速試してみる。
なるほど、皮にシットリとした風格が出る。
今晩から顔に塗り付けてみることにする。
顔にしっとりとした風格が出るかもしれない・・・。