■ 四十年ぶりの
仕事を抱えて大阪に出向く。
喫茶店で打ち合わせをしている時、
私に注がれる視線に気付く。
身なりの整った初老の男性が私を注視していた。
どこかで出会ったことがあるような・・・。
「はてさてどこのどなたであったか」と、
訝しんでいたら、
彼も軽く会釈をしてよこすではないか。
打ち合わせを終え、
その男性の席に向かう。
彼も同じように訝しんでいたらしい。
出身地や出身校を確認しあう。
席を並べて絵画の勉強をしていたOであった。
「オ〜ッ、お前かぁ」と、
口調がいきなりその時代に返る。
彼は建築家になっていた。
髪の毛がすっかり白くなっていた。
私たちが席を並べていたのは、
大阪市立美術館の館内にあった学校。
今からちょうど四十年前のこと・・・。
「Tは美術の道からそれてうどん屋をしている」とか、
「Sは孫ができて、いいお婆さんになった」とか、
「Fは実家に戻って煎餅屋になった」とか、
その時代の仲間の情報を交換しあう。
次には一杯やることを約して別れる。
先ほどアパートに帰ってきたところ。
アルコール・ランプに火を灯す。
智はどこでどうしているのだろう、
新ちゃんは何をしているのだろう、
咲ちゃんは・・・・。
その時代の仲間のことを思い出す。
力も金もなかったが、
あの頃には未来がいっぱいあった。
皆、若かった・・・・。