■ 夏

aquio2005-07-03

昨夜から岡山の自宅に帰ってきている
この村は昼夜の寒暖の差が大きい。
この季節、夜も八時を過ぎると、
気温は二十五度を下回ることがある。
窓を開けて涼んでいたら、
小さな羽音とともに、
一匹のカミキリ虫が部屋に入ってきた。
ゴマダラカミキリ」。
引き抜いた髪をカミキリ虫の顎に近づけると、
「ギシギシギシ・・・」と声をたてながら、
虫は顎を交差させて造作も無く髪を断ち切る。
「なるほど、髪切り虫だわ」・・・と、妙に感心する。
子どもの頃にはよくこうして遊んだものだった。
昆虫を手に持つのは何年ぶりのことだろう・・・。
虫かごと捕虫網と麦藁帽子。
「よい子の夏休み三点セット」。
虫かごを肩からたすきにかけ、
野原を駆けていた頃のことを思い出す。
家に帰れば、冷えたスイカが待っていたものだった。
捕まえた蛍を蚊帳の中に放っては、
いつまでも飽きずに眺めていたものだった。
「この国の住民は絶望的に貧しい」
「しかし、この国の子どもたちの笑顔は世界で一番美しい」。
国に送った書簡の中にそう記したのは、
たしか「シーボルト」だったと記憶している。
我々が経済の豊かさと引き換えに失ったものは大きい・・・。
そう思う。
カミキリ虫を放してやった。