■ 眼鏡考・その2

aquio2005-07-08

「俺たちって眼鏡のエキスパートだもんね」
「俺たちってセンスがいいんだもんね」
「センスのいい眼鏡を売っているんだもんね」
「センスのいい人が買いにくる店だもんね」
「ここはオッサンの来る店じゃぁないんだぜぇ」と、
店員たちはあからさまに嫌味な態度を見せていた。
去年の夏だったと思う。
神戸三宮にある眼鏡屋での出来事。
「ケッ、洟垂れ小僧めが!」
「お前らが生まれる以前に俺は眼鏡業界にいたんだぜぇ」
「なんだよ、その感じの悪い目つきは?」
「眼が悪いんじゃないの!?」
「赤いフレームの眼鏡かぁ、センス悪いねぇ!」
「目立てばいいってもんじゃぁないんだぜぇ!」
そう捲し立てたかったが、
私もいい歳をした大人だから、
彼らの視線には気づかぬフリをしながら、
店内に並べられた眼鏡を静かに物色していた。
なかなかに品揃えがよろしい。
店員たちの態度が惜しまれる。
作業用の新しい「リーディング・グラス」、
つまり、「老眼鏡」が欲しかったのだ。
「30〜60センチのところにレンズの焦点を合わせることができるか?」
という私の問に、
店員は「はぁ?」と聞き返してきた。
こりゃぁ駄目だわ・・・。
「検眼」は医療行為である。
もともと検眼は眼科医だけに許された医療行為。
眼科医の数が少ないから、
その医療行為を眼鏡屋が代行しているのだ。
間違った検眼をされ、
そのデータに基づいて眼鏡を作られでもした日にやぁ、
身体のあちこちが変調を来たす。
眼鏡はお洒落の小道具であるとともに、医療器具でもある。
カッコつけただけの眼鏡屋のなんと多いことか・・・。
視力矯正の基礎知識も無ければ、
レンズの成型も陸にできない店員たちが医療器具を売っている。