■ 散歩道
早く眼が覚める。
久しぶりにゆったりとした気分。
コーヒーを淹れる。
外は見るからに寒そう・・・。
押入れの中からコートを引っ張り出し、
早朝の散歩に出かける。
アパートの階段を下りていると、
母親の子どもを起す声が聞えてくる。
いつもの散歩道に向かう。
上に向かって右側に銀杏、左側に欅の並木の散歩道。
銀杏の黄と欅の茶のコントラスト・・・。
銀杏の落ち葉を踏みながら歩く。
「鳩が飛び立つ公園の
銀杏は手品師 老いたピエロ
前口上は言わないけれど 慣れた手つきで カードを捌くよ
ルルル〜ルルル〜ルルル〜・・・・」
銀杏の落ち葉をトランプのカードに見立てた歌。
曲の題名は何といったっけ・・・?
往年の「フランク・永井」が甘く低い声で歌っていた。
貧乏な画学生であった頃、
梅田から天王寺までよく歩いたものだった。
地下鉄にも乗らずによく歩いた。
地下鉄に乗る金がある時は、その金で木炭紙を買った。
銀杏並木の御堂筋を歩きながら、よくこの曲を口笛で吹いたものだった。
いろんなことを思い出す。
歌を口遊みながら落ち葉を踏んで歩く。
素晴らしく気分がいい。
犬を連れた老爺とすれ違う。
軽く会釈を交わす。
散歩道を小一時間ほど歩いてアパートに戻る。
コーヒーを淹れなおして飲む。
しみじみ美味しい・・・。
今夜は岡山に移動し、岡山から島根に向かう予定。